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確かな時間を捉えた歌を選びました
本当は詩心ありし母だつた新ジャガを毎朝サラダにしつつ
前林道子
〈倫理淵〉に羽虫の死骸渦をなす渦重なりてもなお澄まずいる
丸地卓也
かたまれる蜂蜜すくふ感触にさをだけ売りのねばる声ゆく
斉藤幸子
前向きな秒針で時を刻みつつミーアキャットがつぎつぎに立つ
谷川保子
いくさをへた年の九月に銭湯でぢぢの背中を流したことも
加藤裕司
紫陽花の群なす中を電車来るただ一輌が揺れもて走る
橋本武則
跡継ぎはいないと言いて仲買は椰子の樹すばやく値踏みしており
平野淳子
壁にもたれどぼとぼと聴く雨音は開ききりたる心とも思ふ
霧島茉莉
僧ひとり天狗となつて消えた山ささやくやうに滝落ちてゐる
梅内美華子
瓦屋根に蔦の絡まる蔵ありて看板見れば質屋なりけり
関口ひろみ
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