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そこにあるもの。あったもの。あるはずだったもの。
茱萸坂はここであったか足とめて春の思いはとめどもあらず
中津昌子
いつの間にかカバ公園のカバは去り小さき花野に老人がすむ
鷲尾三枝子
家制度すたれたる世に残りたる枯木のごとき農家屋敷は
丸地卓也
デジタルの海の青さに消えてゆく思い出せない魚のなまえ
檜垣実生
うんとむかし兄と別れた寒駅に立食ひそばの湯気を見てゐる
加藤裕司
あの時はオリオン座で観た映画「卒業」若いなあダスティン・ホフマンも
池田広明
くぐもってゆく夕間暮れうろ覚えの住宅街をほろほろ歩く
佐藤あおい
ぼくたちは虚虚実実、ネモフィラ畑 きれいという言葉を言い合った
上田優士
街へ出た跡に越しくる養豚場街を追われたにおいを連れて
菅原あつ子
滅ぶるか地はほろぶるか定家怖れ姉がおそれて見たるオーロラ
鹿取未放
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