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虫を詠み込んだ、印象に残る歌を選びました。
ジズライザーで土堤刈る人の草けむり青きばつたは塵のごと鳴く
馬場あき子
羽化の後の一世(ひとよ)短きオホミヅアヲ先づその口を手放してをり
西村礼子
ヨカナーンヨカナーンとぞ虫の鳴く義実家の夜はつつがなく過ぐ
芳賀はな
蚊であれば殺していいと子に言へり矛盾をべつたり掌に張りつかせ
秋山聡子
この世を信じるしかない 人間(ひと)の傍らで交尾のアゲハゆるがずにあり
東 洋子
息を継ぐ視野のすき間へ水しぶき立てて男は蝶を泳げり
酒田 現
仰臥位に蟬死に揚羽蝶(あげは)は横臥位に腹臥位に人、戦争がきた
尾﨑朗子
ひぐらしに目醒めて嬉し若きらの〈#さとやまつくる〉運動あるを
舟本惠美
生きているということなのだ黒揚羽かぶさるように蜜を吸うなり
佐怒賀弘子
今日てふは明日のなきがらわれに似て蝶よ日暮れのわれ脱(ぬ)けゆきて
塩野賴秀
※( )内は前の語句のルビ
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