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 Twitter(X)を徘徊していると、Twitter(X)で短歌の話題や短歌作品を読むと気分が悪くなる、虚しくなるというような旨のツイート(ポスト)を複数の歌人らしいアカウントがしているところを定期的に見かけていた。内容はともかくとして、これまでその行為が意味するものについては長く納得していなかったけど、気づけば僕も裏アカで似たようなことを呟いたり、短歌の話題を見かけてふつうに体調が悪くなったりしている。最近は、タイムラインはできるだけ開かず、本アカで宣伝とネタツイだけたまにツイート(ポスト)して閉じている。SNSに思考を乗っ取られるのはあまりに癪だか、雑誌や書籍で短歌を読む時間もどんどん減っている。それはふつうに本意ではない。
 先日発売の『ねむらない樹vol.11』で発表された第6回笹井宏之賞は白野「名札の裏」五十首に決まった。受賞の言葉には「載せて頂いた「名札の裏」を、どうかお読みになってください。そして、できることなら、ご感想を一文字でも頂けるととてもありがたいです。どんなお言葉でもお気持ちでも正面から向き合います。」とある。短歌バブル(ブーム)の影響で全体の短歌熱の総量は増しているように思えるが、プレイヤーも増えた気がする分、このような言葉がデビューしたばかりの書き手から出てくる切迫感・低姿勢・欲望は体感としてよく理解できる。そして同時に、今の自分の態度を様々な短歌読者に敷衍するわけではないが、この素朴な願いは一周回って、有効な呼びかけであったと思う。2024年3月の印象として。
  どろどろになっていくメロンフロート/死ぬまでの過程に滞納がある
  地方都市/いつしか風呂は一人で入る/常習犯になりたくてしょうがない
  夏 きっと父とあなたを引き裂いたおれの前科に名前が欲しい
  錆びついているのに乗ると風を切るママチャリで行く目的地 なし
  へその緒の名残がいつも木立とか空の奥から見てる気がする
  遠のいた怒りを手中へ呼び戻すみたいに飲み屋はいつも盛況
 白野「名札の裏」『ねむらない樹vol.11』から引いた。一連を読んで、全体的に「どろどろ」とした定型や韻律の調子を受け取った。疾走感・スタイリッシュさというよりは、むしろ汗臭く一首一首をまとめているように見える。また、「おれ」によるやや上ずった語りの統一感が、この連作固有のパッションを生み出し、他の連作との差別化を果たしているのは確かだろう。「おれ」に合う文体を拵えたことが手柄か。