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 批評会という催しについてはこれまで結社内の口伝でノウハウを継承してきた側面が強いが、無所属であっても参加経験や有志の助けによって滞りなく開催されてきたのがコロナ前までの状況であったと思う。コロナ禍を迎え、大人数での集まりが憚られるようになってから、批評会に関する知見の蓄積に、コロナ禍中に新しく短歌をはじめた人とそれより前から短歌を書いている人でやや断絶があると後輩達と話して思い至ったため、今回は個人的に批評会で重要だと感じるポイントを自分のためにも備忘録として記したい。
 ここ半年で私が参加した批評会は、自著の『遠い感』批評会、阿波野巧也『ビギナーズラック』&橋爪志保『地上絵』合同批評会、山階基『夜を着こなせたなら』批評会、黒岩徳将『渦』批評会(こちらは句集)である。ひとまずこれらを参考に、ここが充実していると面白い批評会だなあと感じた要素を三つ挙げる。①アーギュメントの提出②要約よりツッコミ派の司会③会場発言の順番、である。
 ①アーギュメントの提出
 批評会は基本的にパネリストの発表が開催時間のおおよそを占める。歌集から一首一首の丁寧な読解を目指す人もいれば、大きく傾向を語る人もいる。どちらにしても、新しいアーギュメントを提出しているかどうかが重要だろう。例えば『渦』批評会では、神野紗希が述べた〈平熱〉という切り口が黒岩句の意味内容や文体を超えて俳句シーンを表すようなニュアンスを帯びており、中心的な批評の観点になっていた。参考にすべきパネルだと思った。
 ②要約よりツッコミ派の司会
 司会の基本的な役割は議論の交通整理や話題のタイムキープ等だろう。批評会に拘わらず、一般的な司会の仕事である。だが個人的には、そうした要約の役割以上に、パネリストの発表やパネリスト同士の議論に欠けている前提や視点を次々指摘していくことが大切だと思う。というのも、批評会はいざスタートしてみると時間が非常に短い。終了間際にやっと調子が出てくることも珍しくない。とにかく深掘りしていかないと、なんとなく良かったね、で終わりかねない。
 ③会場発言の順番
 パネル発表と同じくらい、会場発言は批評会の質を高める要素の一つと言える。クリティカルな発言が出るかどうかは参加者に左右されるため、開催者に操作可能な変数としては順番調整が肝心になる。発言指名は年功序列にする必要はないし、また、普段会わない人をせっかくだからと指名する必要もない。むしろ機械的な指名は緊張感に欠く。あくまで私の観測範囲だが、中堅→若手→ベテランの順のときに感銘することが多い。